愛の女神、Queen Harish

10月5日、金曜日。

この日、私の人生に大きな影響を与えたダンサー、Queen Harishのショーが東京・青山でありました。

Queen Harishはジプシーの故郷として知られるインド・ラジャスターン出身のダンサー。男性でありながら女装をして踊り、ステージでは性別を越えた女神の媒体となって踊ります。

前回の来日は2008年。幸いにも私は彼のショーでスタッフをしたり、ワークショップの通訳をした関係でステージでの顔、“Queen Harish”もそうですが、Harishの人となりに触れることができました。ちょうどその頃、私は東京の表参道に住んでいましたが田舎への移住を考えていました。ワークショップでHarishは彼の故郷、Jaisalmer (ラジャスターン州にある街、ジャイサルメール)の話をしてくれました。それが強烈に心に残り、田舎への移住に向けて急激に動き始めることになったのですが、それからちょうど1年後に鴨川への引越しが決まりました。

あれから4年。世界中で踊ってきたHarishがどんなステージを見せてくれるのだろう?その日、ベリーダンスのレッスンがあったのですが、どうしてもHarishと会いたくて生徒さんたちに事情を伝えて東京にやってきました。

会場に到着するや否や懐かしいDevadasiの仲間たちに次々と再会。ショーで踊るNashwaちゃんが楽屋に通してくれたのですが、中では衣装を着て化粧をし終わったダンサーたちが撮影大会をしていました。私が入るなり、Harishは「お~、Elli! あなたが来てくれると聞いて本当に嬉しかった!ご主人もお元気?」(クリスと私はノートPCを買いたいというHarishを連れて新宿の電気街に連れて行ったので…) 「元気にしてるよ。Harishのおかげで人生がすっかり変わって、今はもう東京に住んでないの。田舎に引っ越してお米を作っているよ。」そう伝えると、「もうそれ以上聞いたら泣いちゃう…」と目が潤むHarish。4年前にほんの少し時間を過ごした私たちのことを覚えていてくれただけでなく、田舎へ引っ越したことにこんな風に感動しているHarishの反応に私こそ感激しました。なんて愛いっぱいな人なんだろう…。

それからはまた撮影大会が再開。
次から次へとポーズと表情を変え、楽しませてくれるHarish。

Queen Harish & 楽屋に案内してくれたNashwa(右) ↓

オフ・ステージでもサービス精神に溢れているQueen Harish。カメラを向けられと、永遠とポージングを繰り返してくれます。
「はい、次はこれ。はい、こんどはあっちを見て!と周りのダンサーの監督もしつつ…」
一緒に楽屋に行ったMomoちゃんと私はパパラッチのようにシャッターを押し続けていました^^。
この時の写真全部はfacebookのアルバムに載せました:  Queen Harish Show & WS 2012

出演兼スタッフリーダーで大活躍のMavi(左)と ↓

ショーが開始し、インドワールドが展開していきました。
Queen Harishが登場すると会場が歓声に包まれて、いつの間にか老若男女が完全にQueen Harishの虜になってしまう。

途中、ステージから降りて愛想をふりまきながら客席の間の通路を歩き、やがて80歳ぐらいのおばあちゃんの前で立ち止まりました。そのおばあちゃんを席から立たせて腕をとって一緒に踊り始めたかと思うと、腰を上下にふりはじめました。それを見たおばあちゃんは一瞬戸惑ったものの、なんと腰をふり始めたのです。最後にはバラの花を一輪渡しました。そこにQueen Harishの魔法と愛を感じました。

4年前のQueen Harishのステージでは見られなかったのが、Isis Wingやfan veilを使った踊りです。私個人はこういったプロップス(小道具)を使わないのですが、Queen Harishは完全に独自の使い方をしていてとても新鮮でした。

ショーのフィナーレではステージから降りてきたQueen Harishとダンサーたちが観客をステージへと促しました。気づくとステージが満員電車なみの人でいっぱいになって、それぞれが音楽に乗って踊っていてすっかりお祭り騒ぎ。やがて、ステージの中心でQueen Harishが一つの動きをすると、それが電線のように伝わって、全員が同じ動きをしていました。もう完全にQueen Harishワールドに引き込まれて、会場全体がQueen Harish一色になっていました。踊りのイベントではよく「最後に皆さんもどうぞ~」、という感じでダンスタイムがありますが、ここまで会場が一体となったショーは生まれて初めてみました。

今回のQueen Harishを一言で言うと「愛」かな…。 前回は凄まじい生命エネルギーに圧倒されましたが、今回はひたすら「愛」でした。
それは生きること、踊ることへの愛でもあるし、自分や会場にいる全ての人への愛でもありました。
だからQueen Harishの存在と踊りは人を幸せにし、生き方を変えていく力をもっている。
踊りのもつ本来の意味やパワーを改めて実感するステージとなりました。

ショーの様子はFBのこちらのページで見ることができます。

10月6日、土曜日。
5日の晩は都内の友人宅に泊まらせてもらったのですが、Queen Harishショーが頭の中で何度もリプレイされて(^^;)なかなか寝付けず、3時間ほどしか眠れませんでした。鴨川に住んでいるとあれだけの刺激を受けることはなかなかないので私の脳みそは興奮状態になってしまったようです^^。眠いし、疲れているけどHarishのワークショップを2つ受けることになっているので気合を入れました。

ワークショップの写真 ↓

10:00~12:00はラジャスターニー・ジプシーのワークショップ。
Harishが子供の時から踊っていた、ジプシーダンスを”Harishのタッチで洗練させたバージョン”を学びました。
4年前にHarishはこう言っていました。
「私は踊りをスタジオで習ったことはありません。私はジプシーたちが踊っているのを見て真似て踊りを学んでいきました。」

そんな彼のワークショップからはテクニックを学ぶと言うよりは、彼のダンス哲学(人生哲学)を教わるという感じでした。

「ジプシーの踊りを踊るには、まずはジプシーのattitude(態度)をもつ必要があります」とHarish。
そう言って、楽屋で撮った写真のようなポーズをいくつかとって見せました。
「ジプシーはちょっとクレージーです。だからクレージーになれないと踊れません。」には一同大笑い。

ジプシーの踊りはめちゃくちゃ動きが早くて、始終全速疾走をしているような感じです。
さすがのHarishも疲れるようで、途中で動きをゆっくりして床に座り込んだり、または寝そべったりして「休憩」をとるようです。
ただし、体のどこかの部位、たとえば首や腕が必ず音楽のリズムに合わせて動いているのだとか…。
素晴らしいダンサーは皆そうですが、音楽と動きが完全に一致しています。

14:00~16:00はボリウッド・ムジュラと題して、古典舞踊をベースにしたボリウッド映画に登場する踊りのワークショップ。

「ボリウッドダンスは古典舞踊ではありません。だから完全に自由です。皆さんも私の真似をしないで自分ならではの動きを作って。」

そう言って4つぐらいの動きをつなげた振りつけをひたすら繰り返しました。でもその動きのニュアンスや表情が音楽のリズムやメロディーにあわせて毎回微妙に変わっていきました。
例えば途中で1回転するのですが、彼の顔を見ていると毎回違う顔なんです。
1回転の中に物語を見ることができる…それがQueen Harishの踊りの極意かもしれません。

そしてちょっと笑えるのが、自分でつけた振りを何度も忘れていました^^。
これはよく分かります。音楽のテンポやフィーリングが変わっていくのでずっと同じ動きの連続をしていくのは逆にとても難しいことです。
ましてやHarishのようにその時その場の気分で踊っていく人なら尚更のこと。
私も踊る時は一切振り付けをしないので気持はよーく分かります。

最後に「表情」の話しになりました。

“Hello”と挨拶する表情では眉をピクピクっと上下に動かす。
“shy”な表情(通称:”Masala Chai”^^)では正面を向いている顔を素早く斜め下に向け、視線を片方の肩に落とす。
“anger(怒り)”を表す表情(通称:”American Expresso”^^)ではシャイな顔からまた一気に正面を見て、目を見開き、息を止める。
“I love you”という表情では下まぶたを一瞬だけ上に僅かに動かす。

これらの表情を皆で練習していったのですが、平均的日本人にとって表情を作るのがいかに難しいかが良く分かります。
大体、眉を上下に動かすなんて、 日本のコミュニケーション文化にはありませんからね(笑)
ただ、踊り手としてはたくさんの表情を作れることは何よりもの財産です。
私も自分が教えるレッスンでよく「顔の表情だけでも踊れるようになったら素晴らしいダンサーです」と言います。
これまでに色々な踊り手を観てきて思うのは、私たちは映像としてではなくモーメント(瞬間)で踊り手の素晴らしさを記憶します。
そしてそのモーメントの中でも大抵は「表情」が最も印象に残るのです。
なので表情だけでどれだけの表現力があるかが、ダンサーとしての素晴らしさと比例していると思っています。

ではこの表情の表現力をどうやって磨いていくのか…。

Harishは「私がステージでする表情は普段の私の表情と同じです。」と言っていました。
「だから私の表情を真似する必要はありません。自分なりの表情を見つけてください。」とも。
表情に乏しいとして知られる日本人は普段から自分の表情を豊かにする努力が必要なのかもしれません。

でも何よりも大事なのは、表情には自分の中にあるものがそのまま反映されるということ。
Harishは「私は踊っている時、“自分が世界で最も美しい”と思っているの。 もちろんそれは本当じゃないことは分かっている。でも、自分がQueen Harishとして踊る時は、“自分が世界で最も美しい”と思って踊るの。」と言いました。

その言葉を聞いて、私の心の中で今回のショーとWSでの学びがひとつにまとまりました。

ショーでは「愛」を感じたと書きましたが、それはQueen Harishが自分を愛しているから。
「自分が世界で最も美しい。」と思うことは「自分を愛している」からこそできるのです。
自分にそこまで愛を向けている人は誰の目から見ても気持ちが良いものです。
なぜなら本来私たちはそれだけの愛を自分に向けることが気持ち良いと分かっているからです。
だからそれを実践しているQueen Harishについつい引き込まれるし、虜になってしまうんだと思います。

また、自分自身を愛で満たしている人は他の誰かに愛される必要がないのです。
むしろ逆で、自分から溢れ出る愛で人をも満たしてしまう力がある。

Queen Harishから溢れる愛を受けて、誰もがQueen Harishを愛さずにはいられない…。
そんな目に見えない愛の循環がQueen Harishショーでは起きていたんだな~と思いました。

愛溢れる(笑)Harishの表情その1 ↓

程度の差こそはあれ、ほとんどの人は誰かに愛して欲しいと思っているのではないでしょうか?
例えば踊り手であれば観客に「美しい」、「うまい」と思われたいものです。
でも本当は逆で、人として、踊り手としてすべきことは自分を愛で満たすことです。

私は「女神のわ」という女性の集いを開催していまが、毎回違うテーマについて話し合うにも関わらず繰り返し浮上するキーワードがあります。
そのひとつが「自分を愛すること」。
私たちひとりひとりがもっと自分を愛することで、世界がより素晴らしい場所になると思います。

今回、愛の女神の媒体、Queen Harishの踊りと人生哲学に触れて、改めてそれを実感することができました。

愛溢れる(笑)Harishの表情その2 ↓

ありがとう、Queen Harish! また会える日を楽しみにしています!

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Queen Harish サイト: http://www.queenharish.com/
Queen Harish in Japan (in facebook): http://www.facebook.com/QueenHarishInJapan?fref=ts

Posted in ベリーダンス Belly Dance, メッセージと思想 Messages and Thoughts
2 comments on “愛の女神、Queen Harish
  1. UMI says:

    えりちゃん、、、久しぶりです!

    私は彼に会った事はないけれどエリちゃんのシェアで
    まるでショーやワークショップを体験したかのように感じたわ。
    シェアをありがとう!

    この冬は初めてラジャスターンに行く計画をしていたので
    益々興味津々になったわ。

    ジプシーの踊りにはジプシーの態度を持つ必要がある!
    うん。そう思います。
    トルコのジプシーも態度が大きすぎて (笑)
    圧倒されるくらいの自己主張で踊っているもんね。

    愛溢れたHarishのパフォーマンスをいつか見てみたいです。

  2. kawaki momo says:

    ALL OF LOVE ♡ 一緒に過ごせた時間はいつまでも輝いています★